地すべり対策

道路を新設する場合とかに山をカットし、長大法面を施工しているのをよく見かけます。
そして、土砂と岩盤の間や、岩盤の亀裂などに湧水が出ていることがあります。
少しの湧水だと水抜パイプなどで対処できるのですが、あまりに大量だと法面が崩壊することだってあります。
そんな時には水抜ボーリングを何箇所も施工するのがいい方法だと考えられています。
先日、新潟県の雪解け水で発生した大規模地すべりも、やはり地すべりブロック内の水を排除するために水抜ボーリングを行っていました。
このように、明らかに水が出ている所の水を抜くのは比較的簡単なのですが、地すべり地帯で、
地下水を排除するための水抜ボーリングは、うまく゛みずみち゛に当たると出るのですが、いくら掘っても出ないこともあります。
つまり、地すべりの誘因としては地下水(間隙水圧)が大きいのですが、必ずしも飽和しているのではなく、
特に岩盤すべりでは、先に述べた゛みずみち゛つまり、岩盤の中の亀裂を伝わって流れている水の通り道に当たるか当たらないかは勘みたいなものです。
だから、水のありそうな所をめがけて扇状に何本もまとめて掘るのが一般的です。
掘削深度も20mくらいから50mくらいまでが一般的で、これは、地すべりブロックの範囲外までボーリングするとなると、
これくらいの深度は掘らなければいけないという目安です。
大規模な地すべり地帯では集水井を施工します。
集水井とは、大規模な井戸のことで、よく使われている材料はライナープレートと言う鉄製の波板です。
ボーリング機械は使わず、小さいバックホーや手掘りなどで、直径3m~3.5mで深さが20m以上の井戸を掘って、
水を集め、井戸底からはボーリング機械で谷川などをめがけて排水ボーリングを行い、この集水井に溜まっている水を排水します。
地すべり地帯では、この集水井を何基も施工しているのを見かけます。


地すべり対策工法としては、抑制工と抑止工に区分されます。
今回は抑制工のうち、当社の専門である地下水排除工を説明します。

(1)水抜ボーリング工

①目的
・水抜ボーリング工は横ボーリング工とも言い、水平やや上向きに行ったボーリング孔にストレーナ加工した保孔管を挿入し、
それによって地下水を排除することにより、すべり面に働く間隙水圧の低減や地すべり土塊の含水比を低下させる工法です。
・地表から5m以深のすべり面付近に分布する深層地下水や、断層、破砕帯に沿った地下水を排除するために施工します。

②設計・施工時の留意点

・・ボーリング深度は帯水層または地下深部のすべり面を切ってさらに10m程度掘削するのを標準としますが、湧水が多いときにはそこで掘り止めをする場合もあります。
・孔口の位置はなるべく安定した地盤に設け、1箇所から放射状に施工するのを標準とし、孔口はコンクリート壁やブロック積等で洗掘されないように保護します。
・水抜ボーリングはすべり面を切るように行い、先端の位置で5~10m程度開くように施工するのが一般的です。
・地下水の低下高は3mと考えていますが、必要に応じて地下水位観測を行い、水位低下が不十分な場合は追加対策を検討します。
・掘削孔径は66mmを標準とし、掘削終了後、帯水箇所(もしくは保孔管全長)にストレーナーを付けた硬質塩化ビニール製等の保孔管を挿入します。

③維持管理時の留意点

・点検・確認し、変状が確認された場合には原因に応じて適切な対応策を実施します。
点検内容として、孔口保護施設の破損変形や湧水による浸食、小崩壊、排水量の減少、土砂等による閉塞、目詰まり等があります。


(2)集水井工

①目的

・集水井工は、集水用の井戸を掘削する工法で、深いすべり面位置で集中的に地下水を集水しようとする場合や水抜ボーリングの延長が長くなり過ぎる場合に用いられます。
・井筒内でのボーリング作業のために直径3.5~4.0m程度のスペースを必要とし、ボーリングには1.0~1.5mの短尺ロッドを用います。

②設計・施工時の留意点

・集水井は地盤の比較的良好な地点に設置します。
・集水ボーリングにより集められた地下水は、排水ボーリング工(長さ100m程度)または排水トンネルにより自然排水させます。
・集水井の深さは、活動中の地すべり地域内ではすべり面より2m以上浅くし、休眠中の地すべり地域内および地すべり地域外ではすべり面を切って2~3m貫入させます。
・集水井の材料はライナープレート等を使用し、表層部のコンクリート打設は材料と一体になるように広範囲に行い、養生期間を守る必要があります。(養生期間が少ないと変位が大きくなります)
・底部はコンクリート張りにします。
・集水ボーリング工は、すべり面を切るよう集水井の中から放射状に、先端部の間隔が5~10mとなるように施工します。
・集水ボーリングは帯水層ごとに数段配置するのが一般的であり、ボーリング深度は水抜ボーリングと同様にすべり面を切ってさらに10m程度掘削するのを標準とし、上段の深度が長く、徐々に短くなります。
・大規模な地すべり地で1基では水位が低下しないの場合は、集水井は横方向に40~50m間隔で設けますが、これによる地下水の計画低下高は5mとすることができます。
・工事完成後地すべり運動によって変形または破損する恐れのある集水井は、礫、ずり、玉石等で埋め戻しておくことも考慮しないといけないのですが、この場合はボーリング孔の洗浄等の管理ができなくなります。

③維持管理時の留意点
点検・確認し、変状が確認された場合には原因に応じて適切な対応策を実施します。
点検内容として、集水井本体の破損、変形、集水井周辺の変状、地すべりの進行、排水量の減少、土砂等による閉塞、目詰まり等です。 


(3)排水トンネル工

①目的

排水トンネル工は地すべり規模が大きい場合や地すべりの移動層厚が大きい場合などで、集水井工や水抜ボーリング工のみでは効果が得難い場合に計画されます。
・排水トンネルはすべり面の下にある安定した基盤中に設け、排水すべき位置から分岐トンネルですべり面を切って集水するか、あるいは孔壁から帯水層に向けて横ボーリングを行ったり地表からトンネルに向かって縦ボーリングを行って地下水をトンネル内に落としたります。

②設計・施工時の留意点

・排水トンネル工は、トンネルからの集水ボーリングや集水井工との連結などによってすべり面に影響を及ぼす地下水を効果的に排水できるよう設計します。
・トンネルの底部には排水路を設けます。
・排水トンネルによる地下水の低下高は5~8mとすることができます。
・トンネル坑口は地すべり地域外の安定した地盤に設ける必要があります。
・集水井と排水トンネルを連結して、井戸をずり出し坑として用いたり、集水井の排水孔としてトンネルを利用したりすることもあります。
・地すべり地外から明瞭な水みちが地すべりブロック内に連なっている場合に、トンネルによって水みちを遮断すると非常に効果的です。

③維持管理時の留意点

点検・確認し、変状が確認された場合には原因に応じて適切な対応策を実施します。
点検内容として、トンネル内部の亀裂や歪み、地すべりの兆候、異常土圧等です。